またまた、新しいファミリー
ごく個人的な観測なのですが、ヘビなどの爬虫類に嫌悪感を感じない人は、100中の10人くらいまでで、あえて好きだという人は更にその内の1人いるかいないかではないかと思います。
爬虫類に対する嫌悪感のルーツは、人類の祖先が未だサルともネズミとも区別がつかないような小さな生き物だった太古の時代に、天敵の爬虫類から追いまわされ補食された遠い記憶がDNAの片隅に消えずに残っているからだといわれています。
そういえば、薄暗い横穴に追いつめられて、チロチロと細長い舌を出して迫り来る赤く光る目のヘビに、絶望的な気持ちで身構える恐怖の記憶が、深〜いふかい意識の底にあるような・・・。
ことほどさように、通常は爬虫類、とりわけヘビが苦手あるいは嫌いというのが通り相場でありましょう。普通中の普通、凡人中の凡人を自負する僕は、当然、ヘビが苦手です。
というか、大の苦手!で、大嫌い!!です。
田舎で棒切れを振り回して遊んでいた子供の頃に、田んぼの高い畦から忍者気分で飛び降りた着地地点に大きなアオダイショウがとぐろを巻いていて、全身から血の気が引く思いをした記憶が今でも脳裏に焼き付いています。
淡路で農業を始めた僕に、苦手なものから逃げていたら米粒ひとつ出来ないのだと最初に試練を与えてくれたのも、あの気味の悪いシマヘビやヤマカガシ、アオダイショウやマムシなどのヘビたちです。
草刈り、田植え、水の管理、稲刈りなど、すべての農作業シーンに顔を出し、そのつど肝を冷やされる僕にとっては、まったく有り難くないいきものです。
なんの因果か、息子がこともあろうに最高学府でこの春から、ヘビの勉強をすると言い出しました。
水棲のヘビで最大のアナコンダなどが研究対象だというのです。そんなとんでもないことに高い学費や生活費を払うお目出度い親がこの世にいるのでしょうか!?(いたらそのバカ親の顔が見てみたい。)
いや、まぁ百歩譲って学業だからそんな事で論文を書いて卒業出来るのなら良しとしても、彼は個人的にもそんな親に黙って趣味としてヘビやヤモリを飼っていたのです。ニシキヘビとボア、それにトカゲモドキヤモリなんだと、やれやれです。
これもですね、目の届かない下宿先でこっそり飼っている分にはまぁ良しとしても、その彼がこの春から配属される研究先の施設の宿舎では飼えないからと我が家に連れて帰って飼うという。
そんな理不尽な事が通るとでも!?
先にも述べたように、ヘビなんかは淡路の我が家の周りにウジャウジャいくらでも居るから連れて帰らんでもいい、と断固言いつけておいたのですが、息子曰く「ヘビならどれでもいいというワケではない、この二匹のヘビは長い間一緒に暮らした僕の家族なんやデ!」と涙目で強く訴えて一歩も譲らない。
我が息子の泣きのテクニックに、また一段と磨きがかかったなと変に関心もしたけれど、考えてみれば息子が家族というならば当然我が家の家族、「知らないうちに、口と目と長い胴だけの手足のない不気味なヤツを家族に持った覚えはないがなぁ」と思いつつ、・・・。
仕方なしに、静岡の下宿先から引っ越しの荷物とともに我が愛車の後部座席に乗せて連れて帰ってきました。
帰りの高速道路で後方から追突事故でも起こされて、「大蛇が高速道路上を大脱走」の見出でニュース・ネタにでもなったらとヒヤヒヤものでした。
いや、ホント、想像するだに気分が悪くなる。
そんなこんなで爬虫類ファミリーが我が家に居着いて早や一と月近くが経ちましたが、だんだんなれてゆく自分が・・・怖い。
息子が、次に『新しいファミリー』と称して連れてくるのが、ヒトの女性であることを切に願うものであります。
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