冬のおもてなし
我が家の駐車場の前にある一本の櫨(はぜ)の木。
18年程前に淡路島に引っ越して来た時にはまだ実生(みしょう)の低い木でした。
僕の背丈程で、秋には真っ赤に紅葉して小さいながらも目を楽しませてくれるので鮮やかに覚えています。
その櫨の木が、年々ぐんぐん大きくなって、今では遂には3mを超える大木になりました。春の新緑、秋の紅葉とそれぞれの節目に見事な季節感を演出してくれます。
櫨の木の有り難いところはそれだけではなく、実は紅葉が終わった後のこの時期にこそ僕の本当の楽しみが来るのです。
というのは、この櫨の枝先に数珠なりに付いた実が、たくさんの野鳥を呼び寄せてくれ、ベランダに居ながらにして一日のんびりと好きな野鳥観察が出来るという、贅沢な時間を与えてくれるのです。
野鳥たちにとっては、真冬の食べ物が極端に少なくなったこの時期に、唯一残されたごちそうなのでしょう、入れ替わり立ち替わりいろんな種類の鳥たちがやってきます。
では、その櫨の木にやって来た野鳥たちの姿を見ていただきましょう。
一番厚かましいくせに以外と警戒心の強いヒヨドリです。
なかなか美しく撮らせてくれません。
キャッ、キャッ・・という騒々しい鳴き声とともにやってくるツグミです。これの焼き鳥は実はとっても美味しいのです。昔、田舎ではどこかの欠食児童が田んぼでこれを捕まえて羽をむり、焚き火であぶって砂糖醤油で付け焼きにし、おやつにして食べました。アーメン。
ツグミの仲間、シロハラです。
恥ずかしがりやでなかなか出てきませんが、雪のちらつくような厳しい冬場には木の実の誘惑に負けて頻繁にやってきます。我が家のような小さな谷にでも5〜6個体が越冬しているようです。
同じくツグミの仲間、トラツグミ。これはツグミより少しデカいです。トラっぽい柄のツグミということか。夏の夜に不気味な声で「ヒ〜、ヒ〜」と鳴くのがこれ。横溝正史の小説映画で記憶にある「鵺(ヌエ)の啼く夜は恐ろしい・・・」の鵺の声の正体がこれなのだそうです。
ついでの余談ですが、鵺って顔がサルで胴がタヌキ、手足がトラで尻尾がヘビのごちゃまぜカメレオンのようなややこしい姿の妖獣です。(何の役にも立たない、ど〜でもよい知識です。)
我が家の中庭の住人、ジョウビタキの♀。
一日中家の周りをぐるぐる飛び回っています。ツグミやメジロには反応しないのですが、近い仲間のルリビタキがやって来た時には猛然とアタックをかけ追い払います。
若いオスのルリビタキ。成鳥になると渋いブルーとオレンジが美しい小鳥です。夏には高地の針葉樹林で美しい声で鳴いてくれますが冬期はひたすら地味でググッ、ググッと微かに鳴くだけ。
アオジの♀です。
櫨の実は口に合わないようですが日に何回か様子を見に廻ってきます。チッ、チッと舌打ちのような鳴き声です。誰でも聞いたり見たりしたことがある筈ですが普通の人は雀と区別がつかないようです。
キツツキの仲間で愛嬌者のコゲラです。
枯れた枝に隠れている虫でも探しているのでしょうか。でも多分、櫨の実も食する筈です。この子がギーギーと騒ぐと大抵ハイタカが上空を横切ります。危機管理意識が高い。
この他にもウグイス、ヤマガラ、エナガ、ホオジロなどがやってきます。
表題下のメイン画像のメジロなどは、一日中絶えることなく次々にグループでやってきます。
時間が許せば、様々なシチュエーションの面白そうな写真が心ゆくまで狙えます。
このように鳥見は車にたくさんの機材を積み込んで遠くまで行かなくとも、たった1本の樹を注意深く観察して気長に待つだけで充分に楽しめるということです。
他の人とひと味違う野鳥写真を撮る一番の近道は「先ず1本の樹を植えること」を座右の銘にしていますが、その意味はこんなところにもあるのです。
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